売上の金額を把握したいんだけど…
昨日の記事で源泉徴収する人/される人について書きました。
ここで例えば、フリーランスのライターBさんが確定申告に向けて、通帳の明細を頼りに売上の金額を帳簿につけている真っ最中だとします。〇×出版㈱の依頼で執筆した原稿料が通帳に振り込まれていました。
日付 | 摘要 | お支払金額 | お預り金額 | 差引残高 |
21-1224 | 振込1 | 〇×出版 | 118,522 | ・・・ |
通帳の入金額は売上総額から源泉徴収額を引いた手取りの金額です。確定申告には、源泉徴収される前の売上総額を把握する必要があります。ところが、Bさんは〇×出版から支払調書(サラリーマンでいうところの源泉徴収票)をもらいそびれてしまい、発行には時間がかかりそう。なんとか源泉徴収される前の売上金額を知る方法はないものでしょうか?
入金額から売上金額を逆算しよう!
- 手取り金額を0.8979で割ってみる
- 手取り金額を0.9979で割ってみて、そのあと1.1を掛けてみる
上のどちらかの方法を試してみて、ピッタリ割り切れたり、下三桁や小数点以下が「.9999…」のようになれば、それが売上総額とみてよいでしょう。
試しに、上の例で〇×出版から振り込まれた金額118,522で計算してみます。
- 118,522÷0.8979=131,999.109032 → 〇
- 118,522÷0.9979×1.1=130,648.561979 → ×
おお!「131,999.109032」はピッタリ割り切れてはいませんが、下三桁が「999」となっており、限りなく「132,000」と近いので売上総額は132,000と考えることができます。
「130,648.561979」のほうは割り切れず、どの整数とも近くないので今回の例ではボツです。
売上総額が132,000ですので、売上132,000と手取り118,522の差額13,478が源泉徴収された金額です。この情報をもとに、Bさんは仕訳を記帳していきます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金 | 118,522 | 売上高 | 132,000 |
事業主貸 | 13,478 |
逆算のやり方は2通りある
先程の逆算では、2通りのやり方を試しました。なぜあの数字で逆算すると、売上総額が求まるのでしょうか。求めたい数字を1と置いて式を書いてみると分かります。
- 1-1×10.21%=0.8979
- 1.1-1×10.21%=0.9979
上と下の式の違いは、
- 売上(消費税込)を1と置いて、その売上から源泉徴収額を引いている
- 売上(消費税抜)を1と置いて、その売上から源泉徴収額を引いている
ということにあります。
このことから分かるのは、源泉徴収額の出し方には
- 売上(消費税込)の金額に10.21%をかけて出すやり方
- 売上(消費税抜)の金額に10.21%をかけて出すやり方
があるということです。
どっちのやり方でも良いのですが、厳密には、下の消費税抜の金額に10.21%をかけて出すやり方は、請求書等で、報酬そのものの金額とそれにかかる消費税の金額が区分して記載されている必要があります。
仮にBさんが請求書を発行して、かつ、報酬と消費税の金額を区分して記載していたら、〇×出版からの入金額はどうなっていたのでしょうか。
売上(税込) | 消費税 | 売上(税抜) | 源泉所得税 | 手取り |
132,000 | 12,000 | 120,000 | 12,252 | 119,748 |
手取りの額が118,522から119,748に増加したのが分かりますでしょうか。
確定申告をすれば最終的には両者のやり方に違いはありませんが、会社から振込まれる金額を少しでも増やしたい場合は、下の方法(消費税抜きの金額に10.21%をかけるやり方)を試してみてはいかがでしょうか。