昨日の記事を書いたあとに、こんなニュースを目にしました。
「キャシュふる」というそうです。(キャッシュふるだと思っていました)
一言でいうならば、換金代行業者でしょうか。
ふるさと納税したお金の20%が現金で戻ってくる
といことを謳い文句にしています。
特産品でなくて現金で戻ってくる、寄附した現金がまた現金で戻ってくる…もはやなんのためのふるさと納税なのか分からなくなってきました。
いつものふるさと納税であれば、
リスク(出費) | リターン(物品) |
2,000円 | 地域の特産品 |
となり、リスク(2,000円)をリターン(地域の特産品)が上回っていてお得だったわけです。
今回のキャシュふるだと
リスク(出費) | リターン(お金) |
2,000円 | 10,000円 |
こちらもリスク(2,000円)をリターン(10,000円)が上回っていてお得です。
キャシュふるを利用した寄附の最低額は50,000円からだそうです(サイトに小さく記載があります)。
寄附した50,000円の20%(=10,000円)がもらえて出費(2,000円)を引くと、たしかに8,000円お得です。
10,000円相当のモノがもらえるではなく、10,000円の現金がもらえます。
じゃあ、100万円寄附すれば、20万円ゲットだぜ!とは簡単にはいきません。
前回の記事でお話した通り、ふるさと納税で返ってくるお金には上限があります。出費が2,000円で済む上限があるとも言えます。上限を超えると出費が2,000円以上に膨らんでいくということです。
前回の記事の公式が以下でした。
この式にあてはめると、100万円寄附して20万円ゲットできるのは、大体課税所得が2,500万円くらいある人です。我々は100万円寄附しても、出費>もらえるお金になってしまいます。
キャシュふるの最低利用額5万円を利用して8千円をゲットするにも、200万円くらいの課税所得が必要です。課税所得は収入から各種控除を引いたあとの金額ですので、サラリーマンの年収にして500万円くらいが必要です。
特産品を売りたい人 | キャシュふる運営会社 | 特産品を買いたい人 | |
メリット | ・使わない特産品を換金できる | ・手数料収入が入る | ・欲しい特産品が買える |
デメリット | ・特産品の値打ち>換金額となるおそれ ・上限額を超えてしまうおそれ | ・運営費>手数料収入となるおそれ ・在庫リスク | ・欲しい特産品がないおそれ |
それぞれにメリットがあり、ビジネスとしては成り立ちそうです。
運営会社が果たして特産物受給権という在庫を捌き切れるのかが気になりますが。
最後に、このキャシュふるを利用して特産品を換金した場合、どういった税金がかかってくるのか見ていきましょう。
いつものふるさと納税は、一時所得に該当します。(国税庁Q&A)
寄附をしたことと、地方公共団体(法人)からモノをもらっていることを区別します。
お金を払ってモノを買った、という一体としての行為とは見ないのです。
では今回のキャシュふるはどうなのでしょうか。
キャシュふるでも、寄附とモノをもらったことが区別されるとこまでは一緒なのですが、キャシュふるの場合その後、寄附者がもらったモノをキャシュふるに売っています。ですから、いつものふるさと納税分の一時所得に加えて、現金を受領した時に所得税課税が発生すると思われます。
私見ではこの場合、譲渡所得に該当すると考えます。
なぜかというと
・譲渡所得について定めた条文にあがっている「資産」には、動産・不動産の他に、目に見えない権利も含まれる(所得税法33条)。とすれば、今回の特産物受給権もその「資産」に該当する。
からです。
雑所得に該当するとも思えますが、
・他のいずれの所得にも該当しないから雑所得である(所得税法35条)、というためには譲渡所得でないと説明する必要があるが、譲渡所得に含まれないもの(所得税法33条2項)として同条同項の「営利を目的として継続的に行われる」に該当するとは言い難い
と思います。
譲渡所得・雑所得のどちらの所得と国税庁は見てくるのか、興味深いところです。
<追記> 2022年6月10日をもって、キャシュふるはサービスを終了した模様です。