本業と副業を損益通算して節税ってできるの?

所得税

損益通算できる所得は限られている

損益通算とは、異なる所得(例えば事業所得と給与所得)同士を相殺して、黒字を減らすことをいいます。

どんな所得の赤字でも、他の所得の黒字と相殺できるわけではなく、以下の所得の赤字限定です。

・不動産所得の赤字

・事業所得の赤字

・山林所得の赤字

・(総合)譲渡所得の赤字

上記4つの所得が赤字であるならば、その赤字と他の所得の黒字を損益通算することは可能です。

只野さんの節税(?)術

ひと昔前に、「無税入門」という本が出版されました。

著者の只野さんは、サラリーマンとイラストレーターの2足のわらじで生活していました。

只野さんに言わせれば、イラストレーター業が本業(事業所得)で、サラリーマン業は副業(給与所得)ということでした。

するとイラストレーター業で出た赤字は、事業所得なのでサラリーマン業の黒字と相殺でき、結果合計の所得を小さくすることができた、と本には書かれています。

ここで問題となるのは、イラストレーター業が本当に事業所得に該当するのか?という点です。

判例は事業所得であるか否かの判断基準を以下のようにしています。

・反復継続して行われているか…繰り返し長い期間行われているか

・営利性があるか…もうける意思だけでなく実際にもうけがでているか

・自己の計算と危険において独立してなされているか…自分でリスクを負っているか

・客観的に事業といえるか…他人から見て本業といえるか

只野さんの場合、1番目や3番目は充たしていても、2番目や4番目を充たしていないと言えます。

なぜなら、2番目については、イラストレーター業はずっと赤字であったといい、もうけがでていません。もうけがでていなくては事業として生活の基盤を支える所得とは言えないからです。

また、4番目については、会社の同僚からは只野さんは「サラリーマンのかたわらイラストを描いている人」と認識されていたことでしょう。それはそれなりの給与所得を稼ぎ出すにはフルタイムで時間拘束される必要があるからです。そうなるとイラストレーター業は客観的に事業とは言えません。

事業とはいえないとなると、只野さんのイラストレーター業は雑所得に該当します。

雑所得からでた赤字は、不・事・山・譲のいずれの所得の赤字にも該当しないので、他の所得と損益通算することができません。

さいごに

本業と副業の損益通算のよくある例としては、本業がサラリーマン(給与所得)で、副業がマンション経営(不動産所得)の場合に、本業の黒字と副業の赤字を損益通算する場合などです。

只野さんの例は、本業がサラリーマン(給与所得)で、副業がイラストレーター業(雑所得)という分類に落ち着くと思います。

本の中でイラストレーター業を事業所得として申告して、税務署からお咎めがなかった!としているのは、単に、運よく税務調査の対象とならなかった結果と考えられます。

本業と副業の損益通算の際は、慎重に判断することが要求されます。