個人で事業を営んでいる方が、何かのタイミングで損害保険金を受け取ったとします。
その場合、受け取った損害保険金に所得税がかかるのか?が今回のポイントです。
損害保険金は原則、非課税!
結論から言うと、損害保険金は原則、非課税です。(所法9①十七)
身体・心・資産等に生じたマイナスの状態を、ゼロに戻すためにもらったお金ですので、もうけとしての性質に乏しいということです。
※上記は個人の場合です!法人の場合は、損害保険金は課税対象となります。
じゃあ例外は?
国税庁のタックスアンサーにこんな文言があります。
個人が不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受け取る損害賠償金については、原則として非課税となりますが、個人事業者が受け取る収益補償や必要経費補てんのための損害賠償金などは課税の対象となります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2201.htm
本来あがるはずであった売上の補償分や必要経費の補てん分は課税対象となる、とあります。
必要経費の補てん分とは例えば、店舗に自動車が突っ込んできて店舗がぶっ壊れてしまった→代わりの一時店舗を借りた→その一時店舗の賃借料の補てん金をもらった ような場合です。
壊れた店舗を修理するための補償金なら非課税だけど、一時店舗の賃借料の補てん金は課税だよ、ということですね。
このように一時店舗を借りた場合、一時店舗の賃借料を経費として計上します。と同時に、もらった補てん金については収入として計上することになります。
これは賃借料だけ計上して補てん金は計上しないのは、費用の二重計上に等しいからダメ、経費と収入は両建てしてね、という趣旨です。
費用の二重計上はダメの例として他には、事故などで負傷した際にもらう治療費があります。
治療費は確定申告の際に医療費控除の対象となりますが、その際に医療費控除の対象となる治療費は「治療費総額-もらった保険金」となります。治療にかかった費用総額を医療費控除とすることは出来ません。もらった治療費が非課税なのにその上、医療費控除が総額受けられるというのはやり過ぎだよ、ということです。
では、先程の例で、突っ込んできた自動車が、店舗に陳列してあった棚卸資産もぶっ壊してしまい、その棚卸資産について損害保険金をもらった場合はどうでしょうか?
これは課税となります。
不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得・・・に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする。
所得税法施行令第94条
一 当該業務に係るたな卸資産・・・につき損失を受けたことにより取得する保険金、損害賠償金
棚卸資産は事故でぶっ壊れたけど、売れたのと同じだ!お買い上げありがとうございます!と考えて下さい、という趣旨です。
ここで、同じ損害保険金なのに、店舗分が非課税で棚卸資産分が課税って不平等じゃない?という疑問があるかと思います。
店舗はぶっ壊れた時に、帳簿価額を経費とすることができます(これを資産損失といいます。)
この時、もらった保険金がある場合、その保険金分は経費にできません。
例:店舗帳簿価額500万円、もらった保険金300万円⇒経費計上額200万円(500-300)
店舗分の損害保険金は非課税ですが、経費のマイナス要素となることで、棚卸資産とバランスを取っているわけです。
まとめ
補足
ところで、先程の例で壊れた建物が、店舗でなく自宅だったらどうでしょうか。
自宅は事業用資産でなく生活用資産です。そのため、事業とは関連性がなく経費にはできません。
その代わりに、生活用資産に発生した損失には「雑損控除」という所得控除のルールが設けられています。