はじめに
直近のカタール・ワールドカップでも、重要な試合の勝敗がPKで決定しています。(日本vsクロアチア、アルゼンチンvsフランスなど)
最近のPKのトレンドを知り、来年2026年のワールドカップ観戦に活かすべく、表題の本を読んでみました。
PKを外す原因
サッカーの試合で90分戦ったあと、さらに前後半の延長戦でも決着がつかないと、勝負はPK戦に持ち込まれる。
それまでチーム戦だった勝負は、突然1対1の個人戦になり、選手は突然襲ってくる不安や緊張と戦いながら、キックを成功させなければならなくなる。
そうしたプレッシャーが普段の練習とは違う行動を招き、パフォーマンスにも影響を及ぼし、PKを外す原因となることがある。
【ホイッスルからキックまでの時間が長過ぎて失敗】
・マーカス・ラッシュフォード (2020EURO決勝)
※平均4~5秒のところ、11秒かけてキック
【キーパーから目を逸らしてしまい失敗】
・ポール・インス (1998ワールドカップRound16)
※ロベルト・レヴァンドフスキのように意図的にキーパーとの対峙を回避する場合を除く
【ホイッスルからキックまでの時間が短過ぎて失敗】
・ジェイミー・ギャラガー (2006ワールドカップ準々決勝)
※キリアン・エムバペのように短いが成功率が高い選手もいる
キッカーのテクニック
PKの成功率
ヨーロッパ各国リーグ平均 78.6%
ロベルト・レヴァンドフスキ 89.7%
ハリー・ケイン 86.6%
クリスティアーノ・ロナウド 84.9%
ズラタン・イブラヒモビッチ 83.2%
ネイマール 81.3%
モハメド・サラー 80.4%
メッシ 77.9%
【予めキックする方向を決めてからキックする方法(GK非依存型キック)】
・ハリー・ケインが採用
・メリット…余計なことを考えなくて済む
・デメリット…キックする方向がGKの飛んだ方向と一致してしまうとPK決定率が下がる
【キーパーの動きを見てからキックする方法(GK依存型キック)】
・ロベルト・レヴァンドフスキが採用
・メリット…最初はGKに主導権を譲ることになるが、最終的にはGKの逆をつける
・デメリット…ボールでなくGKを見ながらキックする技術が必要
【その他のテクニック】
・間を取る…だいたい6秒~10秒、落ち着くため
・深呼吸…だいたい3,4回
・マインドセット…緊張を受け入れ、意識を切り替える
GKのテクニック
【エミリアーノ・マルティネスのやり方】
・キッカーにボールを渡すふりをして遠くに投げる
・キッカーと握手をする
・PKを止めたあと踊る
・キッカーに話しかけて煽る
【ブルース・グロベラーのやり方】
・キックされる前に踊る
※同様のやり方をするGKにイェジー・ドゥデク
【ヤン・ゾマーのやり方】
・飛ぶ前にフェイントをかける
※GK依存型のキッカーに効果的
【その他のテクニック】
・PKスポットをスパイクで荒らす
・PKスポットでキッカーを挑発する
・キッカーにボールを渡さない
・歩き回る
・キッカーの癖を書いたメモを用意する
・センターからずれた位置で構える
チームメイトのテクニック
・PKを外した選手を温かく迎え入れる
・肩を組んでキッカーを見守る
・PKスポットが荒らされないように守る
・キッカーを相手チームの妨害から守る
監督のテクニック

【PK戦直前のミーティング時間は短い方が良い】
・余計な情報を与えて選手のプレッシャーを増加させずに済む
・事前の準備が周到だったことの表れ
【キッカーは事前に選んでおいた方が良い】
・選手の責任を軽減させることができる
・立候補がなかった場合、チームの士気が低下する
【ミーティングで話すのは監督だけにした方が良い】
・情報が錯綜せずに済む
・監督が責任を引き受けることを選手に示せる
【ミーティングで道具は使わない方が良い】
・余計な情報を与えて選手のプレッシャーを増加させずに済む
・アイコンタクトにより、選手との絆を深めることができる
【GKと対話した方が良い】
・特に出番の多い選手のプレッシャーを和らげることができる
結び
特に興味深かったのは、キッカーのテクニック(GK非依存型とGK依存型)です。
自分がサッカーをしていた頃の記憶を遡ると、ずっとGK非依存型でした。予め蹴るコースを決めておくんですね。
緊張している中、GKの動きの逆を突いて蹴る、なんて芸当はとてもできませんでした。
小学生の頃は、右隅に蹴ると決めていました。軸足を左に向けて右に蹴ることでGKの逆を突く狙いでした。
それがいつの間にか、軸足を右に向けて左隅に蹴るやり方に変わっていました。おそらくジダン選手がそうやって蹴っているところを観て影響されたんだと思います。
GK依存型キックで有名なのは遠藤保仁選手でしょう。本書でも登場していました。
遠藤選手は蹴る前は瞑想状態で、不安などは微塵もないそうです。是非、現日本代表のPKコーチになって欲しいものです。